理事長挨拶
日本妊娠高血圧学会2021-2023 理事長あいさつ
東京女子医科大学 内科学講座
教授・基幹分野長 市原淳弘
2021年12月24日より、本学会の理事長を拝命いたしました。どうかよろしくお願い申し上げます。
1980年に東京で故鈴木雅洲先生と故古谷博先生を世話人として第1回日本妊娠中毒症研究会が開催され、本学会の礎が誕生しました。その後、1993年に日本妊娠中毒症学会に、2004年に日本妊娠高血圧学会に改称されました。2018年には妊娠高血圧症候群の英文名称(hypertensive disorders of pregnancy: HDP)、定義、病型分類が改訂され、2019年には関博之前理事長の御尽力により本学会は、一般社団法人として新しい歩みを始めました。そして、この長い歴史の中で、初めて内科医が本学会の理事長を務めることになりました。
HDPは主に産科医が診療する疾患でしたが、近年における病態解明の進歩と医療ニーズの拡大は、この疾患が扱う対象領域を拡大させました。具体例として、HDPの予防(プレコンセプションケア/インターコンセプションケア)や予後(HDP経験女性における脳心血管イベントリスクの上昇)にも関心が広がったことが挙げられます。現在もなお産科医が診療の中心であることに変わりはありませんが、時代の変遷は、関連する内科医やメディカルスタッフ等とのチーム医療をより一層重要なものとして求めています。
一方で社会全体に目を移すと、ダイバーシティ&インクルージョンへの意識の高揚によって女性が社会の中で担う役割が重くなり、妊娠前から健康被害を認める女性の割合が増加しています。病型分類に高血圧合併妊娠が加わったことも、HDPと診断される妊婦が今後増加することを容易に予想させます。また、最近のSNSの拡充やIoTの進歩は、医療界に対してオンラインやAIの活用をミッションとして与えました。HDP診療においても、オンラインやAIをどのように活用していくかについて検討を始めなければなりません。さらにCOVID-19によって我々は、一つの国で起きた問題が瞬く間に世界中に広がることを実感しました。疾病の予防と対策の為には、国際間で連携して対応していくことが必要不可欠です。また、COVID-19流行がもたらしたNew normalな生活様式は、妊娠・出産といった人生イベントに対する価値を我々に再認識させました。今後HDPに対する社会の関心がさらに高まることは必至です。
日本妊娠高血圧学会がさらに発展し向上し続けるためには、これら課題に対する適切な対応と社会のニーズに応じた変革が求められています。学会員全員の力を結集し、本学会が着実に前進していくことを切望します。